北海の星 (1983年〜1987年)

◆ デビュー作にして初長編作品(全11巻:世宙文化社)−現在絶版
◇ 架空の王国ボスニアを舞台に繰り広げられる、一人の英雄の一代記を描いた長編で、キムヘリンの出世作である。
 絶対王政から民主制に移る時期が情熱的に描かれ、この作品が発表された80年代当時、民主化を望みつつ社会科学を学び、学生運動を行っていた大学生たちに愛されたことでも有名である。
 主人公はユリフィン・ジョアン・アウグスト・メンフィス。この英雄の歩みとともに作品は二つに分けられる。前半は軍人貴族のメンフィス侯爵の個人史が主であり、後半は、ボスニアの革命勢力とともに社会改革を企てる民衆活動家としての活躍を描写する。
北海の星 作品紹介(Korean)
  北海の星 ファンサイト (Korean)

冬鳥の羽根ひとつ (1986年)

◆ 雑誌初連載の中編。(全1巻:図書出版大元)−現在絶版
◇ 一般漫画誌《漫画広場》に1年余をかけて連載された作品で、『君のための訪問者』の延長線上にあると見られる。主人公の名前が同じだから同一人物だという意味ではない、時期的に、作家自身の投影としての「ソ・ジハン」だという意味である。
 キムヘリンは「ソ・ジハン」を主人公としたストーリーをたくさん構想していたと思われる。しかしこの『冬鳥の羽根ひとつ』では、そのうちのパク・シネとの部分だけが抜き出されて完結した。
冬鳥の羽根ひとつ 作品紹介(Korean)

飛天舞 (1987年〜1991年)

◆ 長編第2作(全6巻:図書出版大元)
◇ 2001年、日本にて日本語版刊行:(全6巻:タイガーコミックス)
◆ キムヘリンの2番目の長編で、中国の元明交替期を背景に、多くの人間群像を魅力的に描写した作品である。
 東洋(中国)を背景にしたこと、その上、武侠的な要素まで併せ持った、この稀に見る「少女漫画」は、少女漫画は女しか読まない、という先入観を打破し、多くの男性読者たちにアピールした。
 キムヘリンの作品の中で、最も広く大衆的に知られている。完結して10年が過ぎた2000年には映画にもなり、原作の人気を実感させた。ゲーム化・ドラマ化の企画も進行中である。
飛天舞 作品紹介 (Korean)
  アンチ『映画・飛天舞』ホームページ (Korean)
  飛天舞 ファンサイト (Korean)
  飛天舞 ファンサイト (Korean)

テルミドール (1988年〜1991年)

◆ 雑誌《ルネサンス》連載作品で、長編第3作(全3巻:図書出版大元)−現在絶版
◇ キムヘリンの3番目の長編で、フランス革命期の若者らの苦悩と愛を繊細に描き出した作品である。
 民衆革命を通して理想的な国家を建設した『北海の星』とは対照的に、『テルミドール』では、失敗した革命、主人公の死で終わる。作者は、ユージェニーの死、その最後のシーンを描くために『テルミドール』を始めたと語る。
 すなわちこの作品には、理想的にばかりは進行しない現実、その裏面の真実を描き出そうとした作者の歴史観がそっくりそのまま表現されている。
テルミドール 作品紹介 (Japanese)
テルミドール 作品紹介 (Korean)

アラクノア (1992年〜?)

◆ 雑誌《ルネサンス》に連載されたが、雑誌廃刊により連載中断、未完である。(既刊2巻:図書出版大元)−現在絶版
◇ キムヘリンの4番目の長編になるはずであったが、連載中断。ジャンルはSFだが、オムニバス構成で展開されている。キムヘリンの作品中では、いろいろな意味で珍しい性格を有している。
 この作品を出発点として、キムヘリンの作品は以前とはやや違う歩みに向かった。社会矛盾と個人の苦悩を配置した以前の作品群とは違い、人間内部の矛盾に関心を向けている。
アラクノア 作品紹介 (Korean)

火の剣 (1992年〜作業中)

◆ 複数誌(《テンギ》→《WHITE》)で連載され、最後の2巻は単行本書き下ろしで刊行されている長編第4作。(全12巻:図書出版大元)
◇ 作者の主たる関心が変化したことを如実に見せる作品である。社会・政治的に混乱した時代に翻弄され、苦悩する人間の姿を詳細に描き出すという、作品の特徴はそのまま維持しながらも、以前の作品ではあまり描かれなかった女性についての問題を描写したことから、作者の成熟が感じられる。その一方で、民族間の対立や混血児蔑視等の問題までも、無理なく表現している。
 この作品は、《テンギ》で連載され8巻まで刊行されたが、雑誌廃刊により中断、4年後に《WHITE》で連載再開されたが、またも雑誌廃刊によって中断した悲運の傑作である。
◆ あらまし(〓 click)
◇ 評 論 (〓 click)
火の剣11編 - 本文の譯 (〓 click)
火の剣 作品紹介 (Korean)
火の剣 ファンサイト (Korean)
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曠野 (1998年〜?)

◆ 複数誌(《イシュー》→《WHITE》で連載されたが、連載中断により未完。長編第5作。(既刊2巻:図書出版大元)−現在絶版
◇ 北欧の仮想歴史から出発した作者の旅路が、ついに韓国史へと帰着した作品。日本の植民地時代を背景にしているが、ストーリー展開は、韓国近現代史まで続くという。
 いまだ完結されておらず、既刊分も少ないので(完結時までの分量を推測した場合)、現時点で評価することは難しいが、韓国近現代史を扱う漫画作品は少なく、作者の力量がよく発揮されることを期待する。
曠野 作品紹介 (Korean)

ロプヌル失ってしまった湖 (短編集1)

◆ 最初の短編集。単行本副題『愛のための挽歌集』
◇ 1:『heath咲く時には...』(1986年、《9番目の神話》第2号)
  2:『俺たちの聖母様』(1987年、《9番目の神話》第3号)
  3:『ロプノール〜失われた湖水』(1996〜97年、《WHITE》)
◆ 1998年、図書出版大元より、3編をあわせ『ロプノール〜失われた湖水』として刊行。−現在絶版
キムヘリン短編集紹介 (Korean)

シャマンの岩 (短編集2)

◆ 2番目の短編集。単行本副題『愛のための頌歌集』
◇ 1:『君のための訪問者』(1985年、《9番目の神話》第1号)
  2:《シャーマンの岩》(1995〜96年、《マイン》)
◆ 1998年、図書出版大元より、2編をあわせて『シャーマンの岩』として刊行。−現在絶版
キムヘリン短編集紹介 (Korean)

 

 

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